1秒+18コマ #3
神山侑子
井上は伸ばしかけていた本城の腕をつかみ、立ち上がらせた。
「痛っ、何するんですか!」
強引に引っ張られ反射的に振り払おうとしたが、本城の倍もの大きさの手に掴まれた手首は
びくともしなかった。
そのまま半開きになっていた仕事部屋のドアに押し付けられる。
体が近くなると、何かの香料と井上の体臭を感じた。ムスクというのか?
どこか香辛料のような匂いもあり、白いくたびれたシャツから覗く太い首から発しているようだ。
「お前が監督なんだからどんなカットにするのかは確かにお前の自由だ。だがな、お前だって
本当はAパートのラストがあんな緊張感のないもんじゃダメだと思ってるんだろ?」
「あのコンテだって、色々勉強して描いたんです。いくら作監だからって、監督のコンテを
全否定されるいわれはない!」
掴まれた手首が軋むように痛い。このままでは潰されそうだ。
本城は脂汗を滲ませて井上を正面から見据えた。
「おまえ、そうしてるとなかなか色っぽいな」
思わせぶりなシーンは上手いのに、肝心なところになると逃げちまう。お前の悪い癖だ。
と、本城の言葉には全く答えずに井上は言いたい放題だ。
ふと腕をつかむ力が緩んだかと思うと、本城は明かりをつけていない仕事部屋に突き飛ばされた。
「うわっ__!」
ドサリと倒れこんだそこは床ではなく、フローリングに直に敷いたマットレスの上だった。
起き上がろうとするのを仰向けに押さえつけられて本城は悲鳴を上げた。
掴まれていた右腕が痺れていて力が入らない。
「誘惑されるときの女の気持ちなんて、あんたに分かるっていうんですか」
本城は頭の隅でハザードランプが点灯するのを感じながら、そんな危険を感じるのは間違いだと
本能的な警告を無視した。
「少なくとも、どんな顔をするのかくらいは分かるさ。今のおまえみたいな顔だ 」
本城の太腿に馬乗りになり、井上は自分のシャツのボタンをはずし始めた。
井上の逞しい上半身があらわになる。
「な、何___を」
井上はゆっくりとシャツを脱ぎながら、更に本城に体重をかけてくる。
本城のTシャツをたくし上げたかと思うと、
「まあ、自分の顔はわかんねーだろうから、あとで鏡の前で百面相でもしろ」
「こんなの誘惑じゃない、強姦だ! はなせ!!」
「バーカ。おまえの描いたのは誘惑の体したレイプだろうが」
この段になって本城は滅茶苦茶に腕を振り回し、体を捩った。
だが、完全に押さえ込まれ井上の下から這い出ることもできない。
井上は本城の胸から腹までを何度もなで上げながら、ジーンズのベルトを引き抜き、放り投げた。
バックルが金属の重い音をたてて落ち、フローリングの床を滑った。
井上の手が這い回ると予想もしなかった痺れが本城の体の奥に走った。
「イヤだっ…! ああっ」
自分の上げた悲鳴がこんなに高く掠れているなんて、信じられない。
首筋の血管を探るように吸い付かれ、理不尽にも下腹に覚えのある熱が広がった。
「俺が欲しいんだろ? 俺のものになるんなら、お前が思う以上の
レイアウトを描いてやる」
ぐい、と脚を開かせ、間に体を滑り込ませた井上は、明らかな昂りを本城のそれに押し付けた。
はっと息を呑むほどの熱さと固さ。戦慄し、本城はわめいた。
「卑怯だ!」
本城の足が虚しくシーツを蹴る。井上はその足首を捕まえ自分の脚と交差させた。
「それはどっちかな。俺のも相当だが、お前のも熱もってるぞ___」
井上は片頬だけで皮肉に笑い、まるでもう挿入しているかのように本城の体の上で腰を
グラインドさせる。
「んっ!あっ……あっ…あぁっ…」
布越しの刺激と腰を絡ませている体勢の恥ずかしさに、本城は気が狂いそうだった。
井上は、更に太い指を本城の下着のなかに潜り込ませ、今度はダイレクトな刺激を与えた。
作画の人間にはよくある手の平のタコが井上にもある。しっかりと握りこまれ、ゆっくりとした
動きで上下する。固くなった皮膚が当たると、ぞわりとした快感になって本城を喘がせた。
「うぁぁっ…! んっ____んっ、」
「いい子だ。自分で動いてみろ____こうしていてやる。俺を使え」
何、だと___!?
本城は耳を疑った。あまりにも卑猥で、屈辱的だった。
そう思う間に井上は本城の唇を奪い強引に口をこじ開け、きつく舌を絡めてくる。
「ん___っ、んッ…」
やめてくれ! そう声にしたいのに、出てくるのはくぐもった呻き声だけだ。
体中が熱い。痛いほどに張りつめたもののせいで腰が自然に動いてしまう。
粘液にまみれた井上の手が本城を極限まで追い上げようとしていた。
「あ……あ…あ…」
が、それは突然に途切れた。
開放されたのかと安堵するのと、中途半端なところで突き放されてもどかしい思いが交じり合う。
本城が肩で荒い息をつきながらやっとのことで目を開けると、ジーンズも下着も乱暴に剥ぎ取られ
うつ伏せに組み伏せられた。
何をされるのかは、本城にもわかる。わかるが、脚に力が入らず井上の手にあっさりと開かされて
しまった。
「や__、やめてく…」
井上は本城の怯えなどまるで気にもしていないようだった。
ひんやりとしたジェル状のものが目的の場所に塗りこまれてゆく。
太い指が意外にもすんなりと入ってくる。本城には信じられなかった。
骨の太い、今、本城の顎を掴んでいる、その気になりさえすればその顎など
砕いてしまえるような指が、だ。
そして、それは二本に増やされ、奥をさぐるように動いた。
「____っあ!」
ある一点に触れると、今までとは違う感覚が背中を駆け抜け強制的ともいえる射精感が襲った。
「んん___!! 」
イくまいとして、最も奥に達した指を食い締めてしまう。
井上は喉の奥で笑い、指の代わりに自身をあてがうと一気に本城の中に入ってきた。
「ああ___っ!! いや、いやだ! あぁっ」
「嫌なヤツがこんなに喰い締めるわけがない__こっちが痛いくらいだ。
本城、少し緩めろ」
そんなバカなことがあるものか、自分から迎え入れるような真似ができるか___
「ほら、お前のだって苦しそうだぞ__奥を開ければ楽になれるんだ」
再び井上の手に絡め取られたものは今までのどんな時よりも張りつめ、シーツに大きな
染みをつくるほどに濡れていた。
「あう__っ…ん」
「よし、そうだ。もっと___もっと奥を開け」
言いながら、井上は何度も抜き差しを繰り返した。
そしてついに、その全てを本城の中に収めてしまった。
「______!!」
本城が声にならない悲鳴を上げた、その時___
携帯電話が鳴った。
「邪魔しやがって」
井上が放り投げた本城のジーンズから携帯を引き抜くと、ウィンドウは風間からの着信を
知らせていた。
「出ろよ。風間には帰るように言え」
ほら___、と通話ボタンを押して耳に押し付けられる。
(本城さん? どうですか、まだ終わりませんか?)
痛みと無理矢理に追い上げられた性感とで、思うように口が開かない。
返事ができないでいると、井上がまたズイと体を進めてくる。
「!!!っ」
(本城さん? あれ…電波がおかしいのかな…)
「だ、大丈夫、聞こえてる。時間がかかりそうだから、おまえは帰れ」
(え、でも…)
「明日の作打ちなら心配するな。こっちが終わればできるよ___
こっちは車ひろって帰るから」
(でも、遠いですよ?)
「いい、から…帰れ!」
風間は納得しない。見かねた井上が本城の耳元から携帯を取り上げた。
「おお、風間。悪いな__少しコンテに変更が出そうなんだ。ああ。
後でファックスするから、差し替えの用意だけしといてくれ。じゃあな」
言うだけ言って、携帯の電源そのものを切って本城のジーンズの上に放り投げた。
厄介払いを済ませると、井上は今度こそ本城を最後まで追い上げた。
本城は今まで触れられなかった乳首をこね回され、耳に舌を差し入れられ、
今、全身がこのセックスのモードになってしまっているのをまざまざと感じた。
“いけない___、これは、まずい___こんなのは”
思いながら本城は声を上げ続けた。
1秒+18コマ | trackback(0) | comment(0) |
<<1秒18コマ #4 | TOP | メサイア 17 >>
comment
trackback
trackback_url
http://hamura.blog25.fc2.com/tb.php/47-5f3c94d6
| TOP |


